山菜採りは違法?実は森林窃盗罪に該当します【殆どの人が知らない事実について元警察官が解説します】

春や秋になると増えるのが山菜採り。

ぶっちゃけ私も子供の頃は他人の山で勝手に採っていました。

恐らく知らない人の方が多いと思いますが、実はこれ、、、。
森林窃盗罪という法律違反なんです。

という事で今回の記事では、
森林窃盗罪って何?
実際に検挙した例を紹介
森林を所有する方にお勧めする対策方法
の三つについて、警察官時代の経験を踏まえて解説してきます。

山菜採りは森林窃盗罪に該当する

山林って一見所有者がいないと思われるかもしれません。

実際は下記3つの何れかに該当します。
国有林が所有する森林
公有林自治体などが所有する森林
私有林個人企業が所有する森林

所有者はいるものの、侵入すること自体違法ではありません

そこに生えている植物や生息する昆虫を許可無しに窃取してしまうと森林窃盗罪違反になってしまうんです

森林法第197条
森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者は、森林窃盗とし、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

e-Gov 法令検索

私も警察官になるまで知りませんでしたし、何なら実家田舎なので普通に山菜採って食べていました。

子供の頃の私なんて、

無料でおかず食えるの最高じゃん!

とすら思っていましたもん。笑

保安林の場合は更に罪が重い

保安林とは、
水源の保持土砂災害の防止生活環境の向上などの森林が持つ公益的機能を重視し、機能を発揮することを一般の森林以上に期待された特別な森林
の事です。

なんか難しい言葉で分かりにくいですね。

簡単に言うと、雨水を吸って川の氾濫を防いだり、土砂災害で建物や人に向かって崩れる現象を守ってくれるという事です。

とにかく普通の森林じゃ無くめちゃ大事な森林という訳です。笑

そんな大切な保安林に生息している山菜なんか採ったら絶対ダメですよね?

だからこそ普通よりも罪が重く設定されているんです

森林法198条

森林窃盗が保安林の区域内において犯したものであるときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

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採った山菜を貰った人も罰せられる

これからとんでも無くヤバい事を言います。

実は、採った山菜を貰った人も同罪になるんです。

森林法第201条

森林窃盗の贓物を収受した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

e-Gov 法令検索

でもこんなの全て検挙出来る訳ありませんし、判例があるのかどうか分かりません。

ただ法律が作られているという事は前例若しくは類似事案があったという事です。

今まで当たり前のようにやっていた事が法律に違反するなんて思いもしませんよね。

窃盗罪より罪は軽い

森林窃盗窃盗罪は似ているようで違います。

まず、森林窃盗は森林法という法律の下で規制されています。

一方窃盗罪は刑法です。

また、森林窃盗罪の法定刑が
3年以下の懲役又は30万円以下の罰金
であるのに対し窃盗罪は、
10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
でかなりグレードアップされています。

その理由は、
そもそも盗まれやすい状態である
占有が曖昧
比較的価値が低い
の三つです。

とは言っても所有者が丹精込めて世話している可能性もあります。

その人にとっては財産的価値より大切なものかもしれません。

ですが、世間一般的には上記3点が共通の認識ですので、森林窃盗の方が罪が軽い訳です。

警察目線で言うと、森林窃盗は処理が正直面倒

実は私、現職時代にほぼ森林窃盗のような窃盗事案を検挙した事があります。

ほぼ」というのは、歩道と森林を隔てたフェンスの境目に生えている植物に対する窃盗だったからです。

丁度この写真にある通りです。


森林窃盗と窃盗罪とでは警察官目線で言うと処理に掛かる手間が圧倒的に違います

窃盗犯として検挙した方が楽なんです。

その理由についても説明しようと思います。

窃盗の場合は微罪処分で終了(犯歴無い場合等のみ)

当時私は交番勤務で、上司とパトロール中に老人男性以下ジジイ)が上記場所で採っている状況を現認しました。

怪しすぎたので声かけをしたところ、ジジイの両手にはピラカンサという赤い実の植物が抱えられていました。


詳細を聴取したところ、

玄関に飾ろうと思って採った

許可なんて必要ないでしょ?

と供述。

これによって窃盗行為があった事は確定します。

で、生えていた場所を確認するとギリギリフェンスを隔てた歩道側でした。

なので今回の事案は、市が被害者の窃盗行為になります。

ですが、ジジイが窃取した植物なんかに価値は殆どありませんし、実際市役所に意向を確認したところ、
別に訴えるつもりありません
との事。

結果、犯歴も無かったのでジジイに対する微罪処分で終了しました

この微罪処分というのは、被疑者の写真を撮ったり簡略化された調書を作成するだけで、時間としては2時間もあれば終わります。

刑事事件検挙の中で最も手間が掛からない処理なんです。

森林窃盗の場合は基本事件

あの時は歩道側でしたので微罪処分でした。

ですが、森林側だった場合完全に森林窃盗になります。

そうなると微罪処分は不可能です。

何故かと言うと、微罪処分出来るのは
○窃盗罪
○詐欺罪
○横領罪
○占有離脱物横領罪
○暴行罪
○傷害罪
○賭博罪
だけだからです。
※各都道府県系によって対象事件は異なる。

よって森林窃盗罪の場合は基本事件で捜査します。

これは2時間とか3時間で終わる話では無く、捜査資料を揃えて送致するまで一通りやらなければなりません。

詳しい捜査方法を書く事は省略しますが、とにかく時間と手間が掛かります

しかも当時の私は警察学校卒業したてでしたので、何が何だかさっぱり分かりません。

本当に微罪処分で終わって良かったと思いました。

なので警察官の本音からすると窃盗の方が楽です

楽か辛いかで仕事はしていませんが、警察官も人間ですので手間のかからない方が良いです。

もしあの時ピラカンサが森林側だったら暫くの間非番と休日は返上していたと思います。笑

山林所有者の防犯対策について

この記事を読んだ方は、山菜取りが森林窃盗に該当する事は分かったと思います。

ですが、大多数の人はその事実を知りません

現に、
知らない人が山で山菜採りをしている
という通報は結構多いです。

そしてその行為者に事情聴取すると、
ダメなんて知らなかった
と供述します。

これらの経験から、私は山林所有者も防犯対策をすべきだと思います

そこで、山菜泥棒の対策方法について少し触れておきます。

立ち入り禁止ロープで包囲する。(入ったら軽犯罪法違反)

最初に紹介する防犯方法は、所有する山林への立入禁止を示す事です。


これはただ立ち入る事を躊躇させるだけではありません。

立入が禁止されている場所に侵入するだけで軽犯罪法違反になるんです。

軽犯罪法第1条32号

左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた

e-Gov 法令検索

実際私も山林ではありませんが、軽犯罪法の立ち入り禁止で検挙した経験があります。

当時の処理方法は、簡易書式例という書類作成の負担を軽減した簡易的な事件処理でした。

とは言っても作成する捜査資料は基本事件とそんなに変わりません。

結果としては不起訴でしたが、精神的ダメージは相当与えられたと思います

仮に否認していた場合は基本事件で処理されます。

この場合は起訴させる確率は相当高くなります

要は、前科を付けられる可能性があるという事です。

正直それ位やらないと山菜泥棒なんて無くならないです。

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立入禁止プレートはこちら

山菜採りを禁止している旨記載した看板を設置

二つ目に推奨する対策方法は、

山菜採り禁止」と記載された看板を設置する事です。

立ち入り禁止ロープに付けるだけで大丈夫です。

先程も説明しましたが、山菜採りが違法なんて事知っている人少ないです。

と言う事は殆どの場合が悪意を持って犯行に及んでいる訳では無いんです。

ですので、禁止されている事を目の付く場所に設置すれば山菜採りを断念する人が殆どです。

正直こんな事やっている人少ないと思いますが、マジで対策したいならこの位やった方が良いです。

防犯対策が普及していない事自体も窃盗罪より森林窃盗の方が法定刑が低い所以です。

まとめ

今回の記事のポイントをおさらいします

POINT

✔︎山菜採りは森林窃盗に該当する
✔︎法定刑は三年以下の懲役又は30万円以下の罰金
✔︎保安林の場合懲役5年以下罰金50万円以下
✔︎採った山菜を収受した人も同罪適用
✔︎窃盗罪より法定刑が軽い理由は、
・そもそも盗まれやすい状態にある
・占有があいまい
・財産的価値が低い
の三点
✔︎警察目線で言うと森林窃盗はぶっちゃけ面倒
✔︎本当に取られたく無いなら防犯対策をすべき
→立入禁止ロープ、山菜採り禁止看板の設置


山菜採りは違法?実は森林窃盗罪に該当します【殆どの人が知らない事実について元警察官が解説します】” に対して1件のコメントがあります。

  1. 杉本邦夫 より:

    山林や畑等を所有している農家の者です。

    お勤めをされている方々には「この程度」なのかも知れませんが、それを糧に生活している者にとっては、
    給料を盗まれたのと同じです。しかも山菜はその時期にしか採れない貴重な収入源ですので看過出来ません。
    素人には荒れている様に見える土地でも年に一回以上草刈等の手間が掛かっております、見えない経費が掛かっていますので、「この程度」という考えでしたら改めて頂きたいですね。それで生活している人も居ますので。

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