警察官って強いの?【元警察官が解説します】

世間一般的な警察官に対するイメージの一つとして、「特殊な訓練を受けていて強そう」が挙げられると思います。
実際、YouTubeやティックトック等のSNSに警察官が暴漢を制圧する動画が投稿されており、そのようなイメージを持ってもおかしくありません。
結論から申し上げると、「殆どの警察官が一般人より多少強い程度」です。
なんなら、毎日力仕事をしている鳶職の怖いにーちゃんとタイマンを張ったら負ける警察官の方が多いと思います。
今回の記事では、私が何故警察官がそこまで強くないと言えるのか及び、強い警察官はどういう仕事をしている人かについて、自身の経験を基に解説していきます。

なぜ警察官はそこまで強くないと言えるのか

まずは、私がほとんどの警察官の戦闘能力がそこまで高くないと言えるのかについて解説していきます。

警察学校を卒業後は、術科訓練の回数が極端に減る

警察官採用試験に合格すると、警察学校に入校します。
警察学校では、剣道か柔道が必須科目となっており、自分で好きな方を選びます。
そして、入校中はほぼ毎日これらの術科訓練を行い、卒業時には全員初段を取れるくらい上達します。
警察学校を卒業すると、都道府県下の警察署に配属され、最初は必ず交番勤務になります。
警察署に配属されてからは、剣道や柔道の術科訓練を行う回数が警察学校時代と比べて極端に減ります。
勿論警察官なので訓練は行いますが、警察学校のようにハードなトレーニングは怪我の元になりますので控えますし、訓練の規定出席回数さえ守っていれば叱られる事はありません。
ただし、拝命から3年未満の若手はその規定回数が先輩達より多く設定されていますが、それでもそこまで多くはありません。
また、柔道や剣道とは別に「逮捕術」という術科も警察学校では必須科目となっています。
逮捕術は防具をつけた状態で警棒や警丈、素手で殴り合う競技です。
これも、警察学校時代はめちゃくちゃやらされましたし、めちゃくちゃきついです。
防具つけていても殴られたら普通に脳揺れますし。
しかし、これも警察署に配属されてからは訓練する機会は減ります。
そうなると、自ずと戦闘能力は低下していきます。

そもそも格闘技経験者が少ない

警察官になる人は、意外に格闘技経験者が少ないです。
イメージとしては、小さい頃から柔道や剣道ばかりやってきた人が警察官になると思われているかもしれません。
しかし、実際は格闘技経験者は少ないです。
なので、警察学校に入校してから初めて格闘技を経験する初心者ばかりでした。
中には、小さい頃からバリバリ柔道や剣道をやってきた猛者もいます。
そしてあとから説明しますが、このような猛者は柔道や剣道、逮捕術ばかりを練習する部署に配属されます。
なので、交番のお巡りさんやクラウンパトカーでパトロールをしているお巡りさんはそこまで戦闘能力が高くない人が多いです。

不健康な勤務形態

交番のお巡りさんは、基本的に朝から次の日の朝までの24時間勤務です。
勤務中に仮眠時間もありますが、事案が多発して忙しい時は仮眠時間を削って仕事をします。
そんな不健康な勤務形態を送っているので、自ずと身体は衰えていきます。
その結果として、警察官は一年に一回体力テストを行いますが、年々スコアが落ちている人が多いです。
私は体力が急激に減ってしまうのが嫌でしたので、非番休日でジムワークをしていました。
また、仕事が忙しく毎日寝不足であるが故に、運動をしようという気力が奪われてしまうのかもしれません。

警察学校で取得する柔剣道の初段は誰でも取れる

私は警察学校で柔道を選択し、卒業時には初段を取得していました。
しかし、柔道の正式な初段は「講道館初段」です。
ですので、警察で所得する初段は警察以外の道場に行った際には使えません。
しかも、警察で取得する初段は、誰でも絶対に取得できるものです。
どれだけ弱くても真面目に練習を続けていたら取得できます。
ただ、一生懸命練習をしている事は事実ですので、平均的な一般男性よりも筋力や技術は身に付きます。
中には、警察初段以外に講道館初段を取得する人もいました。
また、警察学校で初めて格闘技を始めた事がきっかけで、キックボクシングや柔術を習い始める人もいました。
ただ、「柔道や剣道めんどくせーな」と思いながら練習していた人は、警察学校卒業後練習がおろそかになりますし、ほとんどの警察官がこの部類です。

そもそも、警察は一対一を想定していない

警察が武器を持った犯人を制圧する際は、必ず数的優位を作ります。
数で圧倒し、間違いなく警察官側も犯人側も必要以上に怪我をしない状況を作ってから制圧します。
また、普段の勤務でも殆どの場合が警察官二人セットで行動をしていますので、一対一になる状況は少ないです。
ですので、警察では二人でどのように犯人を制圧するかといった訓練は綿密に行なっています。
逆に、一対一を想定した訓練はあまり行いません。
ただ、必ずしも一対一の状況が発生しないとは言い切れません。
警察は交番の他に駐在所という施設があります。
駐在所というのは、警察官が実際に居住しながら職場としても利用する施設のことです。
駐在所員は交番員と違って基本的に単独勤務です。
ですので、敵意を持った相手と一対一になる状況も想定されます
よって、駐在員は駐在所にある装備資機材を活用した対処法を別で実施しています。
とは言ってもこのような訓練は頻繁に行うわけではありません。
行なったとしても、私の経験から申し上げるとあまり活用できないと思います。
この類の訓練に総じて言えることですが、訓練の犯人役が本当に警察官を傷つけてやろうと思って攻撃していないからです。
近年、交番襲撃事案が多発している事はご承知の事と思います。
そして、襲撃された警察官も、このような訓練を受けている筈です。
それでも実際に亡くなったり怪我を負ってしまっている理由は、実践的な訓練ができていないからです。
ですので、実践的な一対一を想定した訓練をしていない為、強くなるわけありません。

逮捕術も防具をフル装備している

警察官が行う武術の中で最も実践的なのが、先ほど説明した「逮捕術」です。
防具を装着した状態で、徒手・警棒・警丈で殴り合う競技です。
簡単に言うと、防具と武器を持った状態で行うキックボクシングみたいなものです。
後ほど説明しますが、警察官の仕事の中で、この逮捕術ばかり練習する「逮捕術特練員」という人もいます。
この逮捕術は、実際めちゃくちゃしんどいです。
しかし、結局は防具を付けた状態でしか組手を行いません
空手やボクシング等のフルコンタクトスポーツをやっていた人なら分かると思いますが、防具を付けた状態と生身の状態でのスパーリングは全く違うものです。
痛さが違うのは勿論ですし、距離感や動きやすさも違います。
逮捕術の組手で殴られてもそんなに痛くありませんが、生身の状態で殴られるとめちゃくちゃ痛くて精神的なダメージも負います。
それを知らない警察官が多いので、いざ戦闘する状況になった時に困惑し、相手がある程度心得のある人だったらやられてしまうと思います。

中には、めちゃくちゃ強い警察官もいる

これまで、警察官が強くない理由を、実体験を元に解説しました。
しかし、そんな中でもめちゃくちゃ強い警察官もいます。
そこで次は、どんな人が強い警察官なのか解説していきます。

格闘技ばかりやる「特練員」

特練員というのは、柔道・剣道・逮捕術・拳銃といった、警察内部で行う術科訓練に特化した警察官です。
柔道・剣道特練員は、警察官になる前から学生時代に部活でやっていた人達の集まりで、その中でも県内トップレベル全国大会出場経験者ばかりです。
そもそもこの人達の多くは、特練員になる前提で警察官に合格しています。
そして合格すると、全国の特練員に試合で勝つ為、毎日練習します。
逮捕術特練・拳銃特練は、警察学校在校中の成績が良かった人が基本的に選ばれます。
そして試合で勝つ為に毎日練習しています。
拳銃特練は別として、特練員は実際めちゃくちゃ強いです。
そりゃ毎日鬼のように練習しているので当然ですが。
これらの特練員と練習した経験がありますが、手も足も出ません。
そもそも、生物として全く敵う気がしないと感じました。

普段から格闘技をやっている警察官

警察官の中にも、趣味で格闘技を習っている人は沢山います。
実際、めちゃくちゃ強いけど特練はやりたくないから断っている人もいました。
沢山ある格闘技の中で、私の周りでやっている人が多かった格闘技は最近流行っている柔術です。
その理由は、怪我が原因で仕事に支障をきたしにくいから。
趣味でやっている以上、仕事に影響がでるようなコンタクトスポーツは控えなければなりません。
でも、柔術は全くとは言いませんが、怪我がしにくいスポーツとして普及しています。
そしてその柔術をやっている警察官は結構います。
中には、黒帯の警察官もいますし、元警察官の関根シュレック選手も警察官時代に柔術を初めて現在RIZINファイターとして活躍しています。

そもそも、警察官一人一人に強さは必要ない

これまでなぜ、警察官が強くないのかを説明してきました。
しかし、そもそも警察官一人一人に強さはいらないのです。
その理由は、先ほど少し説明しましたが、犯人を一人で制圧する事は少ないからです。
一人で制圧しようとすると、強い警察官だったら怪我をさせてしまうかもしれないし、警察官が怪我を負ってしまうかもしれないからです。
その為、基本的に犯人制圧は大人数で行う事がほとんどです。
なので、荒れている現場に臨場する際はできる限りの警察官が応援に行きますし、先着警察官も応援を待ってから対応します。
中には、応援を待つ猶予が無い現場もありますが。
あと、万が一刃物を持った人が警察官を襲おうとしてきたら、必殺の武器を警察官は持っています。
それは、拳銃です。
拳銃はやたらめったら使用できる訳では無く、使用判断が法律に定められているので、それをクリアした時のみ使用できます。
そして、刃物で襲ってきた場合、警告や威嚇射撃をしてもなお襲ってくる人に対しては拳銃を使用する事ができます。
これらの事情があることから、警察官は強く無くても良いのです。

まとめ

今回は、なぜ警察官は強くないと言えるのかを自身の経験を元に解説しました。
警察官一人で立ち向かうシチュエーションは少なく、数で圧倒するのが警察のやり方だからです。
でも、近年交番襲撃事件が多発しているように、それだけ警察官の命が狙われる時代になりました。
そして、今後も絶対発生すると私は思います。
だからこそ、今の警察にはより実践に即した訓練を取り入れるべきです。
私が在職していた頃も訓練は定期的に行なっていましたが、あんなの本当に自分の事を殺そうとしている人と対峙した時に、使えないと思います。
実際、交番襲撃事件で警察官がなくなっていますし。
そこでもう一つ、日本警察が取り入れた方が良いものがあります。
それは、テーザーガンです。
ただ、残念ながら現在の日本では導入は限りなく困難です。
この記事ではその理由を解説していますので、一読ください。

警察官って強いの?【元警察官が解説します】” に対して1件のコメントがあります。

  1. アーク大好き より:

    それ所か地震を初めとする、災害時も上手く行くか、不安な所はある。
    世界的に優しいと好評だが、所詮は銃規制故に平和ボケした日本人、地震に慣れてるからこそ油断する。
    能登半島で家族を失った警官を見て、絶対はあり得ないと思った。
    停電、断水、倒壊、火事、液状化、渋滞、津波、火災旋風と、想定外の連続だから、どんなに訓練しても火事場泥棒の略奪は、必ず起きてしまうかも。一番懸念してるのが警官の遺体から、銃を奪われて悪用される事。銃を向けられたら、逆らえない。

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