遺体を取り扱う職業は主に医者、葬儀屋、警察官、司法解剖する大学病院の先生です。
その中でも警察は、孤独死や殺人事件の遺体を事件性が無いか判明させる為、検視という業務を行います。
基本的には刑事課員が主となって行い、交番警察官がその補助をする方法を取っています。
そしてこの検視が非常に過酷を極めます。
ただでさえ辛い業務である検視の中でも、猛暑日+死後長期間経過している遺体の場合は更に過酷です。
今回の記事では特に「刑事になりたい」と思っている人に向けて、あまり知られていない警察が行う検視の辛さについて自身の経験を元に解説します。
私が実際に体験した腐乱死体の検視体験談
警察官は100%遺体を取り扱います。
間違い無くです。
私も初めて検視補助をした時は正直気分が悪くなりました。
でも、本当に辛いのは真夏の灼熱地獄の中で行う検視です。
当時の状況を伝えられる範囲で詳細に解説します。
「隣家から異臭がする」との110番通報
当時、所属していた警察署の管内でも比較的田舎の交番で勤務をしていました。
確か警察学校を卒業して半年経った時だったと思います。
当時、8月上旬の一番暑い時期で、外に出るだけで汗だくになる程でした。
私は、相勤者の係長と真昼間にネズミ採り(交通違反取締り)を行っていたところ、
「〇〇町において隣家から異臭がするとの110番通報受理」
「現場へ向かえ」
との無線指令を受けました。
まだ一線署で半年しか勤務していなかった私でしたが、この「異臭」という言葉を聞いただけで嫌な予感はしていました。
現場に着いたら、、、。
私達はネズミ採りを切り上げ、通報のあった場所に臨場しました。
すると現場には通報者がおり、
「あそこの家からずっと異臭がするんです。」
と私達は伝えられました。
伝えられた「あそこの家」の周りだけ草が伸び放題で、家屋時代は木造の平屋でしたが、いつ崩れてもおかしくなさそうでした。
通報者は、
「高齢男性が一人で住んでいます。」
「でも鍵が閉まったままで、新聞も取り込まれいません」
と教えてくれました。
実際、ポストの中を見てみると二週間以上取り込まれずに残っていました。
経験上、この時点で考えられる状況は二つのみです。
①孤独死している。
②鍵を掛けて長期間旅行に行っている
のいずれかです。
玄関の前に立った瞬間にとてつもない異臭
どちらにせよ、家の中を確認しない事には始まりません。
なので私は係長と一緒に念の為、玄関のガラス戸をノックしようと思い、玄関前に近づいたところ、
脳天まで届くような強烈な異臭が襲ってきました。
あの臭いだけは何とも例える事が出来ない独特な腐敗臭です。
私達はお互い顔を見合わせて何も言わずにただ、頷きました。
一応、玄関ドアと周囲の窓の施錠を確認したところ、唯一人が一人通れるか通れないか位の小窓のみ施錠がされていませんでした。
私は状況を本署に無線で送ったところ、
「家族には許可を取ってあるから窓から侵入しろ」
との指示が返ってきました。
その指示を聞いた瞬間、
「これ絶対俺が行かなアカンやつ」
と気付き、情けないながら私は恐怖を感じました。
だって普通に考えて見てください。
腐敗しているかもしれない遺体が家のどこにあるか分からない状況で、しかもその家はほぼ廃墟みたいな状態です。
尚且つ、侵入出来る窓は人一人入れる位です。
誰だってビビります。
しかし、当時の私は警察官でしたし、異臭がしたとしてもそれは人間では無い可能性もあります。
家人が家の中で倒れていて助けを待っている状況だってあります。
私は覚悟を決めて、
「係長、行ってきます。」
と告げ、小窓から擦り傷を付けながら無理やり体を押し込みました。
侵入して初めて分かったのが、この小窓は浴槽の真上に設置されているものでした。
幸いな事に、「実は浴槽に遺体があった」なんていうサプライズはありませんでした。
そして、私は気絶しそうな異臭の中なんとか意識を保ち、
「誰かいませんかー」
と声かけをしながら、臭いの強い方向へ足を進めました。
遺体とご対面
浴室、リビング、廊下を探しても何も無く、更に私は臭いが強烈な方へ足を進めました。
そして、リビングから玄関方向に繋がるガラス窓を開けた瞬間、
意識を刈り取る程の強烈な腐敗臭
を感じたと思ったら、玄関から廊下に上がってすぐの所に、服を着ていない遺体を発見しました。
その遺体には既に変色しており、ウジが集っていた事から死後かなりの期間経過している事は一目瞭然でした。
遺体を発見した私は、係長と本署に速報し、内側から玄関ドアを開けて外に出ました。
その後、刑事課員が到着するまでの間、現場保存と周囲の聞き込みを行い検視に備えました。
検視
刑事課員が到着し、発見時と遺体の状況を報告し検視の補助を行うことになりました。
遺体の臭いには慣れている刑事課員でさえ、屋内に入った途端嗚咽していました。
そして、いつも通り検視を開始したのですが、気温と腐敗が進んだことにより、遺体のを動かそうとする度に皮がズル剥けになるので、かなり神経を使いました。
本当に異臭が強烈だったんですが、当時騒ぎを嗅ぎつけた近隣住民がギャラリーになっており、玄関の窓を開けたら検視の状況が丸見えになるような状況でしたので、汗だくになりながら検視を行っていました。
また、若手の私は率先して刑事課員の補助をしなければならず、遺体を反転させたりする際にドロドロになった皮膚とウジが制服に付着するので、精神的なダメージが非常に大きかった記憶があります。
というのも、ここまで腐敗している遺体を取り扱ったのが初めてだったので慣れていませんでした。
でも時間というものは過ぎていくもので、4時間位で現場での作業は終了しました。
当時の私のような交番員は、検視があると現場での補助が終われば検視業務から離脱できます。
しかし、刑事課員はその後本署で検視を行うに伴って作成しなければならない捜査報告書があるので、現場での作業が終わったら書類作成に移行しなければなりません。
その書類の量がかなり多いので、短くても半日は掛かります。
検視を終えた私はこうなりました。
人生初の腐乱死体を取り扱った私は、現場で無理やり気絶しないように保っていたので、業務が終了して交番に帰った瞬間にトイレで嘔吐しました。
先ほど、真昼間の交通取締りを切り上げて検視現場に向かったと説明した通り、私は昼飯を食べて間も無くしてから検視に従事しました。
なので、昼食ったものが全て出ました。
また、制服に遺体の皮膚が付着している状況だったので、予め持ってきた予備の制服に着替え、暫くの間一般人から見えない事務室で横になっていました。
全て着替えて手や顔を洗ったにも関わらず、鼻に臭いが残っているので勤務時間中永遠と吐き気を催していました。
これが、私が今でも覚えている位強烈な思い出となった検視です。
経験を重ねる毎に慣れてくる
当時の私は、
「こんなに辛い業務を今後もやるのは無理」
と思っていました。
しかし、警察官を続けて入れば似たような事案はやってきますし、経験を重ねていく内に慣れます。
私も警察官辞める直前は刑事課員でしたので、腐敗が進んでいる遺体や焼死体、水死体等の検視にも従事しました。
人間ですので、どれだけ回数を重ねても平気にはなりませんが、嘔吐するレベルからは脱する事はできます。
なので、現在「刑事になりたい」と思っている方がこの記事を見て、
「私には無理かも」
と思う必要はありません。
確かに、最初は慣れていないので精神的肉体的苦痛はどうしても伴います。
私もグロ耐性がある方じゃないですが、それでも慣れた事が何よりの証拠です。
まとめ
今回は、私が経験した地獄の検視体験談をご紹介しました。
警察官時代によく、「税金泥棒」「楽な仕事しやがって」と言われてきました。
しかし、この記事を読めば警察の仕事が楽な訳無い事が分かると思います。
こういった暴言を警察官に対して発する奴には、一度体験してもらいたいと本当に思います。
恐らく「税金泥棒」なんて言葉一生言えなくなりますから。
でも、こんな辛い業務ばかりでは無く、警察の仕事も中には楽しいものもあります。
こちらの記事では、「私が楽しいと感じていた警察の業務」について紹介していますので、興味があればいと毒してみてください。

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